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◆◇ いじめのシグナルを見過ごさず、その先のゴールを目指して ◇◆ 

200623 虹と田園

◆◇ いじめのシグナルを見過ごさず、
その先のゴールを目指して ◇◆

 「子どもたちのシグナルを見過ごすな!」というフレーズは、イジメ撲滅のための社会啓発のキャンペーンで使われることが多くあります。しかし、実際には、これができる教師、学校は少なく、しばしば子どものイジメ自殺という悲しい事件が起きたりします。

 日本の場合、意識の高い学校や、有意義な研修会もあったりしますが、どのように子どもたちの発信するシグナルをキャッチするのか、どのようなプロセスで解決したか、という部分に関しては、個人のスキルに負うことが多く、そのノウハウが学校現場で共有されることは少ないのです。

 シグナルを見過ごさないためには、日ごろから子どもたちとの会話や交流、行動観察、人間関係の把握、家庭状況を知ることが重要です。
 しかし、それだけでは足りず、他に、「深い洞察力」というものが必要です。深い洞察力は、その状況を正確に把握する力、原因を分析する力、どんな結果に至るであろうかを推察する力、そして良い解決に導くための先見力、そして何より、子供たちの心を理解する力、思考をはかる力が必要となります。

 ある秋の日、私は、大規模校A中学校から相談があり支援を依頼されました。それは、ある中2の女の子が、教室で落ち着いて授業を受けることができない、授業中、トイレに行くと言い席を立ち、そのまま廊下をふらふらとしてしまう、どうもメンタルに問題があるのではないか、といったものでした。

 依頼を受けてスクールカウンセラーとともに訪問しました。
 まずは本人に意識させず、周囲にも悟られないよう、学校見学という自然な形で、校長先生に誘導していただいて、授業参観及び校内巡回のスタイルで彼女を観察することにしました。
 その子は、ふらふらといった悠長な表現ではおさまらない状態でした。教室に入れなくて半泣きで廊下にたたずんでいたり、時に、窓から顔を出し、もしかしたら、その窓から飛び降りてしまうのではないかと危惧される状況もありました。

 教務主任さんによると、どうも家庭では彼女に対して切迫感を持っていらっしゃらないということでした。メンタルが心配なので、母親に精神科で受診するよう勧めたところ、母親は仕事で忙しく受診が難しいと何度も断られたとのこと。
 とうとう業を煮やした先生は、母親の同意のもと、土曜日に生徒を連れ出して、近隣のメンタルクリニックで受診させたところ、医師から「特に問題なし」と診断されて、頭にきていることを話してくださいました。
 学校にいる間、その子は、廊下で泣いたり、うずくまったり、情緒不安定なので、先生としては自殺でもされるのではないか、と心配だったのです。ですが、医師の前では、ニコニコと笑顔で話ができ、あっけにとられたというのです。

 そのあと保健室の女性の養護教諭さんからもお話を聞くことができました。
「彼女はランチルームを利用していない。お弁当を持ってくるがどこにいるか誰も知らない。昼休み時間が終わり、午後の授業が始まる前に姿を見せるので、トイレで食べているのではないか。」といったものです。

 訪問した日の午後、たまたま体育の授業があり、グラウンドでミニラグビーをしているというので、生徒から見られない位置から見学することにしました。
 中学校は、男女別に授業を行います。2クラスの女子たちがプレイをしていました。
 その状況を観察して、スクールカウンセラーと私は無言で顔を見合わせ、うなずきました。彼女の状況の一端が理解できたのです。

 彼女がなんどもなんどもパスを受ける体勢をとってボールを待っていたにも関わらず、女子生徒たちの誰一人、彼女にボールを渡す子はいませんでした。それでも、健気に彼女は走り回っていました。なんと悲しいことか、集団シカトされていることが推測できました。

 一方で彼女は、ほぼ毎日登校していました。そこから、1. 本人自身は学校で学びたいこと、2. 自分の情況や思いを言葉に出して表現できる術を持っていないこと、3. どうしたら良いかわからず、身体的にS.O.Sを出していることなどが分析できました。
 たしかに家庭では、親が忙しく本人に向き合えない側面はありました。しかし、大きな問題は家庭ではなく、学校という場所にありそうです。大人との関係ではなく、子ども同士の関係において、問題を抱えていることが推測できました。

 簡単に言うと、私たち、外部の人間から見ると、これは「イジメ」なのではないか、と思ったわけです。
 内部の先生たちは気が付いていなかったのでしょうか、多分、気が付いていた方もいたと思います。けれども、「本人がイジメだ」と言わなければ、イジメとして扱わないという考え方が邪魔をして、先に進めないでいたのです。
 直近の対処療法として、本人のメンタルを改善するしかないように思われました。毎日、登校するので、不登校ではないので、学校としては、手の打ちようがなく困惑していたのです。

 結局、学校が良いと思えるクリニックへの受診やカウンセリングの継続は、本人が苦しいことを取り除くための解決には結びついていないことは明らかでした。

 私たちは、学校と話し合って、その子にとって一番良い「ゴール」を定め、共有しました。それは、「落ち着いて教室にいられるようになる」ことです。とても難しいことです。ストレスフルな環境のまま、どう介入していくか検討しました。

 私たちは、ご提案をさせていただきました。先生方も授業がありますし、部活もあります。ですから、四六時中、寄り添うことはできません。
 そこで、1. ランチ時間の個別サポート、2. 定期的な授業時間の校内巡回、そして、3. 登下校時の寄り添いを私たち派遣された人間がサポートすることを提案したのです。
 私たちがしばらくこの学校に通勤することになったことにして、本人の自尊感情を大切にする形で、彼女を案内係としてつけてもらうことにしました。
 本人には、私たちの案内役として、ランチ時間に私たちと一緒に食事をとること、登下校時は、防犯パトロールのために公園などの場所を案内してもらうことを伝えて了承を得ました。
 やわらかい表現ながら、「もうトイレで食事は絶対させない」という強い決意をしたわけです。

 さっそく、私たちはランチを体育館入口前のオープンスペースをお昼の場にしました。しばらくすると打ちとけるにしたがって、少しずつ会話がはずむようになりました。
 でも、最初は周囲の目を気にして、他の生徒が近づいてくる足音がするだけで身をすくめたりしていました。できるだけリラックスできるよう会話を心がけました。トランプをしたり、コラージュをつくったりもしました。ある日、足を止めた上級生の女の子にも仲間に入ってもらいました。

 登下校時も、私たち大人が寄り添うようにしたところ、小学校時代に友達だった他のクラスの女の子たちが集まってきて集団で公園を見回ったり、時には、道草して、追いかけっこをしたりすることができるようになりました。もう、独りぼっちではなくなったのです。

 授業巡回することで、ミニラグビーやサッカーの授業では、大人の目を意識してか、パスが回るようになりました。
 最後まで、彼女自身はイジメや集団シカトされていた、とは口にしませんでしたが、それでも少しずつ教室にいられる時間は確実に増えてきました。そして半年が過ぎました。

 最後の仕上げの時期になりました。
 クラス替えです。進級し新学期を迎え、彼女が心を許す美術の先生が担任になりました。また、彼女を無視していた女子とは、別のクラスになるようにクラス分けをしました。加えて、同じクラスに小学時代の友達を入れました。

 新学年になって最初のランチの時間、そっとのぞきに行くと、彼女は自然に机の向きをかえ、お友達とお弁当ランチをしていました。これで、私たちからは卒業です。もう廊下に出て、情緒不安定になることはありませんでした。

 彼女の精神が安定し、授業も集中して受けられるようになり、円満な人間関係を形成することができるようになったのは、新しい環境を作ることができたためと、それに至るプロセスのなかで、しっかりとゴールが見通せていたからです。

 時として、思春期の子どもたちを教育指導する際に、原因を発見し分析するだけではなく、その問題を乗り越えるためには、子どもたち自身に力を持ってもらうことが大切です。

 いじめのシグナルを見過ごさず、解決していくためには、苦しんでいる子の心に注目し、悩みの根本を見抜き、大人たちが、ありありとゴールを描いて、そのために何をするか、といった視点で力を合わせて支援していけることも解決に至る道筋だと考えます。

社会福祉士・精神保健福祉士(元保護観察官)
前名古屋市教育委員会 子ども応援委員会スクールソーシャルワーカー
現社会福祉系大学 講師 堀田利恵

 

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[ 2020/06/22 19:07 ] メッセージ | TB(0) | コメント(0)

◇ 代表メッセージ (2020年6月) ◇◆ 新学期のスタート ◇◆ 

200613 あじさい

◇ 代表メッセージ ◇
◆◇ 新学期のスタート ◇◆


沖縄は梅雨明けしましたが、全国的には梅雨ですね。
激しい雨とともに、蒸し暑い季節がやってきました。

4月に新学期を迎えたはずなのですが、新型コロナウィルスの影響を受けたために、多くの子どもたちにとっては、この6月が新学期のスタートになりました。
あまりにも長い春休みでしたが、やっと終わりました。
ただ、始まりましたものの校内では、近づかない、大声で話さない、マスクをつけるなど、本来の姿とは言えない状況です。

さて、大島商船高専が、今年3月に第三者委員会がまとめた最終報告書を、6月9日にホームページで公表したという報道がありました。やっとです。

NHK NEWS WEBの報道によりますと、国立の大島商船では、3年前、いじめの被害を訴えた男子学生が自殺を図り、調査を進めてきた第三者委員会は、ことし3月、学生に対する暴力やインターネット上での悪口など、合わせて14のいじめを認定した最終報告書をまとめました。
学校は、この最終報告書について、個人が特定できるような名前や発言などを黒塗りにしたうえで、86ページからなる全文を、9日、ホームページで公開しました。
報告書では、
▼教職員が「男子学生がいじめの原因を作っている」などと発言したことや、
▼いじめに関するアンケートを誤って破棄したことなど、
学校の問題点も指摘していて、学校は、今後、学生側の意見を聞きながら再発防止策をまとめることにしています。

また、設置者の国立高等専門学校機構(東京都)は、いじめ対策の実務的な指針とするガイドラインを策定し、全51校に通知を出した。同校の第三者委員会がまとめた最終報告書での提言に対応した。
と毎日新聞が報道しています。

最終報告書を隠さずに公表したことについては、大変に素晴らしい決断だと言えます。
しかし、その裏では、公表を渋っていた高専に公表を求めた被害者のねばり強い交渉があったと聞いています。
また、国立高専機構が全国に通知するというところまできたという意味では、被害者、そしてそのご家族の皆様の勇気ある行動が「国を変えた」のです。
まだ、終わったわけではないと思いますが、ご家族の行動に敬意を表したいと思います。

ほんの少しですが関わってきた私たちも、改めて「調査報告書」を読みました。
被害者の視点をしっかりと捉え、大島商船の問題点、国立高専機構の問題点、改善点の指摘は秀逸だと感じました。
しかし、ここに至るまでが悪すぎです。

学校が認識したのは、2017年4月、いじめ自体はその一年も前の2016年5月末ぐらいから始まっていたのです。
報道によりますと、
「同校は遠方から入学する学生が多いことや、規律ある共同生活を送ることなどを目的に、2年生までは原則として学生寮で生活することが義務付けられている。
被害者らによると、いじめは被害者が入学した2016年4月ごろから始まり、5月に被害者と同室の学生が自死したことをきっかけにエスカレート。
暴行を受けたり、被害者のコラージュ画像をSNSでばらまかれたりするなどの行為が繰り返され、追い詰められた被害者は17年12月に自殺未遂した。
さらに、学校側は被害者の意思を無視する形で、いじめ調査を開始。
被害者の友人3人をいじめ加害者と事実誤認し、突然授業中に呼び出すなどして、長時間にわたる事情聴取が行われた。
複数の教員が学生を取り囲み、「お前が少しでもうそをついたら、退学させることもできる」などの威圧的な言葉が浴びせられ、出席できなかった授業の補講が行われなかったり、一部の学生が恣意(しい)的に停学処分にされたりしたという。」
と伝えられています。

被害者を守ることが責務であるのにも関わらず、あろうことか学校は、「いじめられる被害者が悪い」で押し通しました。
さらには被害者を支えていた友人たちに恫喝まがいの事情聴取し、はては「懲戒処分」に処したのです。
加えて、報告書を読む限り、アンケートを紛失したのではなく、証拠隠滅を図ったように見えます。
反面、本当のいじめ加害者には形ばかりの事情聴取で、加害者の言葉をうのみにしたというとんでもない組織ぐるみの隠蔽が行われたことが、報告書には記載されております。
被害者側は、文科省にも、国立高専機構にも被害を訴えましたが、「教育の自治」の名の下で何も進展しませんでした。
被害者が自殺未遂をするにいたり、なんとか第三者委員会が設けられたという事件です。
私も「高専」というやや変わった学校の卒業生の一人として「高専」に親近感を覚えるものですが、「何やってんだよ!」と、この対応にはとても恥ずかしさを感じます。

これはひとえに大島商船の問題ではなく、高専機構を超えた「国立」の問題、文科省の問題と言えます。
学生を人権を持つ一人の人間として扱わない姿勢に問題があります。
仮にも「教授」とか「准教授」とか名のっている「教官」として恥を知るべきです。
大島商船としては、報告書を載せるだけでは不十分です。
ここまでひどい迫害とも呼べるような行為に対して、何もなかったで済ませるつもりなのでしょうか。
加害者側の学生に対する懲戒もあったとは聞いておりません。
被害者の友人に対し、恫喝、脅迫するなどの理不尽な振る舞いをした教官、そして校長自らの処分を行ってこそ、本気で変わろうとしている姿勢を見せることになるはずです。
当然、国立高専機構も「通知しました」だけで終わらせるようであってはならない、そのように考えます。
大島商船は「誰を守るのが学校の利益になるのか」を考えた結果の行動をとったといえます。
教育関係者は、「誰が正しいかではなく、何が正しいか」を示さなければなりません。

この事件はまだ終わったとは言えないような状況にあります。
本来、子どもたちにとって学校に行くことは、「楽しい」ことでなくてはなりません。
楽しくないから「不登校」を選択するのです。さらには絶望し自殺を図ったりするような事件が起きるのです。
生徒を預かる教師には「当たり前のことを当たり前」にできる学校をつくる責任があります。
当たり前のこととは「いじめは絶対に許さない」ことであり、被害者を「守り抜く」ことです。
そして「学習できる環境」をつくり出し、「この学校に行って良かった」という喜びを語れる生徒を送り出してほしいと思います。
これができない学校は、存在しなくてもよいと言わざるを得ません。

さあ、学校が始まりました。
こんなとんでもない学校が出てこないことを祈りつつ、私たちは、いじめ問題に取り組んでまいりたいと思います。
例年ですと5月の連休明けからいじめ問題が増えてまいりますが、今年は6月末位から増えることが予想されますので、ご注意いただきたいと思います。
何か心配なことがありましたらご遠慮無くご相談いただければと存じます。

一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明

井澤一明ブログ:
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[ 2020/06/13 13:41 ] 代表あいさつ | TB(0) | コメント(0)

★☆ ボーイスカウト ☆★ 

200607 ボーイスカウト

★☆ ボーイスカウト ☆★

私は子供のころからボーイスカウトの活動をしています。みなさんは、ボーイスカウトが、どんな活動をしているかご存知でしょうか。
制服を着て軍隊のようだと思っている人もいるでしょう。実際には「野外活動」という冒険を通しての教育運動です。アウトドアの技術とスキルを磨きながら、「自己鍛錬」と「奉仕活動」を行っています。

この「ボーイスカウト運動」は、世界全体に広がっています。世界中にスカウトの兄弟たちがいます。初対面の外国人であっても、お互いにスカウト経験者であれば、すぐに兄弟のように打ち解けることができます。
スカウト運動の目的は、少年たちがよい社会人になり、幸福な人生を送ること。自分を鍛え、社会に奉仕し、他の人を幸福にすることが、自分の真の幸福につながると信じて、全世界の子供たちがスカウト活動にいそしんでいます。

そのボーイスカウト運動の創始者は、イギリス陸軍の元軍人である、ロバート・ベーデンパウエル卿です。彼は、自らも従軍した戦争での少年たちの大活躍にヒントを得て、ボーイスカウト運動を始めたといわれています。
しかし、そこには、隠された事実があるのです。実は、ボーイスカウト運動が始まった本当の契機とは、日本の存在にあるというのです。

彼が記したボーイスカウトの「聖典」である「スカウティング・フォア・ボーイズ」の中に、その証拠があります。
そこには、かつて、日本に関する記述がかなり多く含まれていたそうです。我が家にもその「聖典」は存在しますが、現代の聖典には日本のことは載っていません。ただ、口絵に唐突に、日本の「おびんずるさま」と呼ばれる仏像の絵が載っていました。その口絵に対しては何の説明もありませんでしたから、子供の頃に、とても不思議に思った記憶があります。実は、その口絵だけが痕跡として残り、本文の日本に関する記述(注)は、全て削除されてしまいました。

「大東亜戦争」がその要因です。日米戦争開始後に、ボーイスカウトアメリカ連盟からクレームがついて、日本に関する記述が削除され、今に至るまで回復していないのです。

創始者ベーデンパウエル卿は、日本と日本の青年たちに感銘を受けていたからこそ、日本に関して多くの記述を残したのです。当時、荒廃を極めていたイギリスの青少年たちに対して、どんな影響や教育を与えれば、「日本の若者たちのように立派になれるのか」と考え、それをボーイスカウトという形で実践した、というのでした。

では、ベーデンパウエル卿が、何に感動したかというと、それは、日露戦争における日本の若者たち、日本兵の武士道精神をもとにした勇敢さ、その姿を見て感動したことによる、というのです。

日本の若者たちは立派でした。
「ロシアとの戦いに敗れれば、日本は滅びる」
「この戦闘に勝たなければ、この戦争に敗れる」
「自分が倒れたとしても、この国を守るためには、この戦闘に勝利しなければならない」

さらに日本の若者たちは、兵士としての能力も抜群でした。
武道の普及によって、刀槍(とうそう)による戦いと銃剣術では世界一でしたから、肉弾相打つ白兵戦では、日本の歩兵は無敵でした。
また初等教育の充実、世界一の識字率により、下士官や兵の知的能力も世界一だったと思われます。これは、日露戦争でロシアの捕虜となった日本の下士官が、尋問の結果、参謀将校も顔負けの博学と認識力を持っていたことで、欧州で話題となったほどでした。

こうした勇敢さ、自己犠牲の精神、戦闘能力と戦闘精神、知識力、認識力は世界の軍隊の水準をはるかに凌駕していました。

この東洋の奇跡のような若者たちの群れに、西欧は驚愕したといってもいいでしょう。
自分を犠牲にしても、日本や日本人のために戦う、こうした若者たちが、203高地に続々と消えて行った姿は、世界に多くの感銘を与えるだけでなく、ボーイスカウトという新たな運動を、始めさせる原動力となったのです。本当に立派な日本の若者たちの姿を見て感動したベーデンパウエル卿が、英国の少年たちを、何とか鍛えなおしたいと思った、それがスカウト運動創始の動機だったようです。

日露戦争で敗れていたなら、今日の日本はないでしょう。彼らの献身がなければ、現代の日本人の幸福もまた、存在しないかもしれません。しかし、いまや彼らの記憶は遠く、日露の戦役で生命を落とした若者のことなど、まったく思い出しもしない人たちが大半でしょう。わずかに、地方地方の護国神社の慰霊碑に、その名前を見出せるのみになっています。しかし、その献身の美しい姿は、形を変えて、ボーイスカウト運動の中に、脈々と流れている。そう思いたいのは、私だけなのかもしれません。

人生の楽しみを、ひとつも経験することなく、若くして戦場に散るなんて、本当に悲しいことです。現代の価値観でみれば「無駄死だ」「人生を無駄にした」と言われるかもしれません。しかし、この世には、無駄なことなど何一つないのです。つらく悲しいことばかりだとしても、それが大きな意味を持つこともあるのです。

そして、203高地に突撃することを思えば、人生に困難などありません。そして今回の私たちの人生での努力は、戦場で散ったりする悲劇ではありません。
今新型コロナの影響で、暗い気持ちになっている子供たちも多いと思います。しかし、負けないでください。
自分と他人の幸福につながる努力です。自分の努力と献身が、自他を生かすことにつながるのです。かつての若者たちが、戦時に世界を感動させたように、今度は今に生きる私たちが、全ての人々の「幸福」を実現するため努力と献身をささげたいものです。

最後に、少し不思議な話をご紹介しましょう。ベーデンパウエル卿は、1912年に来日したことがあります。世界には色々な国があるのに、わざわざ日本を選んで訪問しているのです。それも夢のお告げがあったからだそうです。

ベーデンパウエル卿は、ある時、天国の門まで行く夢を見たそうです。天国の門の鍵を持っているのは、イエスの12使徒の一人、ペテロです。初代のローマ法王、ペテロのお墓の上に、ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂が建てられました。そのペテロが、ベーデンパウエル卿にこう尋ねたそうです。
「お前は、日本を訪れたか?」
ベーデンパウエル卿は、「いえ、まだ日本に行ったことはありません」と答えたそうです。
するとペテロは驚いた、という表情で、
「なぜお前は、あの奇跡の国の日本へ行かないのだ!」と、強くせまったのです。
そこで、ベーデンパウエル卿は、夢から醒めて、日本への旅行を決意したのです。奇跡の国である日本へ行こうと。

今度は私たちの番です。私たち現代の日本人が、奇跡を起こす番です。平和の奇跡を、幸福の奇跡を。小さくても、わずかでもいいではありませんか。

いざ、幸福の突撃ラッパだ。

飯田 剛


(注) 論文「日露戦争期の英国における武士道と柔術の流行」(橋本順光大阪大学教授)は、ベーデンパウエル卿の「スカウティング・フォア・ボーイズ」から、以下の記述を引用している(翻訳は同教授)。
「ボーイスカウト組織の目的の一つは、かつて我が人種の道徳におおきな影響を及ぼしていた騎士道を、現代の英国に復活できないかということである。ちょうど古代の「侍」という騎士たちの武士道が、いまなお日本を支配しているように、騎士道を蘇らせようというわけである。
残念ながら、騎士道はあらかた滅びようとしている。一方で、日本の武士道は今でも子供に教え込まれており、日常生活のなかで実践される存在なのである」


 

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[ 2020/06/07 07:07 ] メッセージ | TB(0) | コメント(0)

★☆ 「たいせつなきみ」というメッセージを ☆★  

200601 少女たち

☆「たいせつなきみ」というメッセージを☆

 コロナハラスメント、自粛警察。
 新型コロナウイルス感染症によって、二次的な被害が広がっている。SNSでの中傷なども憂さを晴らしているようにしか見えない。

 大人の世界で起きることは子供の世界にも波及する。学校で必要以上に誰かを恐れたり、必要以上に誰かを責めたり、それがいじめへと発展することも少なくないだろう。しかし学校現場は心のケアよりも学習の遅れに重点を置き、舵を切ったようにも見える。そんな中、不安やストレスが攻撃へと転化するのを100%防ぐことは出来ない。では大人に何が出来るだろう。

 マックス・ルケード作の「たいせつなきみ」という絵本がある。
 彫刻家エリに彫られた木でできた小人たちの村がある。彼らは誰もが同じことに夢中になっている。それは、ほめたい人には「お星さまシール」を、けなしたい人には、「だめじるしシール」をはること。「だめじるし」ばかりベタベタはられたパンチネロは、外出するのもいやになってしまう。そんな時、どちらのシールもはられていない不思議な小人ルシアに会い、エリに会うことにする。
 そこでは、こんな素敵な言葉が語られる。

「おまえがわたしのあいをしんじたなら、シールなんてどうでもよくなるんだよ。」

 ネット上でも現実でも中傷や悪口にあふれている。「たいせつなきみ」と思われている。そう実感できる人はどれくらいいるのだろうか。

 ネット上でも現実でも中傷や悪口を上回るような愛の言葉が並びあふれ、愛の実在が感じられ、自分自身を信じられるような世界にしなくてはならない。
 まずは子供たちに惜しみなく「お星さまシール」をはることからはじめよう。愛あふれる世界は、愛ある言葉を発するとことから始まる。

守矢 光児


 

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[ 2020/06/01 17:07 ] メッセージ | TB(0) | コメント(0)