「雨にあったら、ゆっくり濡れてこい」 

170811 江田島旧海軍兵学校

「雨にあったら、ゆっくり濡れてこい」

広島県の江田島には、海上自衛隊の幹部候補生学校があります。
もともとは、明治時代に開設された、旧日本海軍の海軍兵学校が前身です。
海軍兵学校は、イギリス海軍の正統な流れを受け継ぎ、全てをイギリス式で統一した教育を施しました。その庁舎のレンガも、わざわざイギリスから取り寄せたという話があるくらいです。

海軍兵学校には、日本全国から選りすぐりの秀才を集めていました。
しかし彼らも、初期のころはずいぶんと面食らったようです。
何せ、当時、服装といえば和服で、食べるのはもちろん和食だけという時代です。パンなど食べたことがない、洋服に触れたこともないような若者たちでした。
それが、急にイギリスのパブリックスクール式の寮生活に投げ込まれたのですから、大変なカルチャーショックに見舞われたようです。

しかも、江田島の海軍兵学校での教育や起居は、イギリスのパブリックスクールよりも、さらに厳しいものでした。
卒業すれば、部下である軍曹等の下士官や兵卒の生き死にに係わる命令を下す立場になるのです。厳しいのは当然です。
もともと、日本の秀才を全て集めたような学校です。もしかしたら、現在の東京大学に入るよりも難しかったかもしれません。なぜなら、学力的にもトップクラスですが、それに体力と精神力も求められたからです。
その優秀な彼らが、厳しい教育と訓練を受けるのですから、ものすごい人材が輩出されました。

私の家内の父親は、先の戦争の末期に、海軍の甲種飛行予科練習生として海軍教育の洗礼を受けました。
そこで兵学校出身の教官に教えられたのですが、この教官が超人に見えたと言っていました。
教官は、南方の海戦で負傷して義足でした。しかし二十歳前の練習生たちに駆け足で負けなかったというのです。義足のハンディなど全くなし、何をさせても完璧にこなす。こんな人材を育てた文字通りのスパルタ教育が、海軍兵学校では行われました。

その兵学校であっても、本当に楽しくくつろげる行事が、たまに許されていたそうです。それが 「短艇巡行」 といわれるものでした。
「短艇」 とはカッターとも言われるオールで漕ぐ小さなボートです。
小さいといっても軍艦に比べての話で、駆逐艦用の小さなカッターでも、7メートルの長さがあって、オールは8本。28人乗りの大きさです。
このカッターを使っての「短艇巡行」とは、陸上で言えば泊りがけの遠足のようなものです。兵学校生徒だけで、瀬戸内の海を泊りがけで巡行することが許されていました。普段はやかましくて厳しい兵学校の生活から、一時解放される気分は最高だったようです。

いざ、短艇巡行に出発する際に、分隊監事からはこんな訓示を受けたそうです。

「雨にあったら、ゆっくり濡れてこい」

いかに穏やかな瀬戸内であっても、海は魔物ですし、いつ天候が豹変するか分かりません。
現在と違って、スマホで雨雲の動きをウォッチできるわけでもありませんし、ポータブルラジオや気象情報が受けられる通信設備がカッターに備わっているわけでもありません。だから、一度、もやいを解いて出港すれば、後は生徒たちの自力だけが頼りになるわけです。
そのために天候の急変に遭遇した場合の心構えを、分隊監事が諭したわけなのです。

「ゆっくり濡れてこい」 とは、天候の急変に際して、あわてずに対処せよということです。濡れることなどいとわず、落ち着いて行動せよということです。
雨で濡れることなど、当たり前のことです。恐ろしいのはパニックになることです。パニックによって間違った操作や行動をすれば、遭難することも考えられます。
問題は濡れることではなく、その際の平静心であり、精神力が問われるということです。

私は高校生のころに、この 「雨にあったらゆっくり濡れてこい」 を知りました。ボーイスカウトでもあったので、一脈通じるところがあり、一時期実践していたことがあります。
実践といっても、他愛のない話です。駅からの帰宅の途中、雨に降られても泰然自若としてゆっくりと歩き続け、決して走るようなことはしない、という変な高校生でした。まあ、濡れるまいとして心が急けば、交通事故に遭いかねませんから、正しいことは正しいのかもしれません。

しかしこの 「雨にあったらゆっくり濡れてこい」 という考えは、実際の雨の場合だけではなく、人生のあらゆる局面に応用が可能な考え方かもしれません。長い人生の間には、予測不可能な変事に襲われることもあれば、理不尽な仕打ちを急に受けることもあります。

現代の「いじめ」のターゲットになることも、その中に入るかもしれません。
その際に、「ゆっくり濡れればよい」 という、心の余裕を持つ必要があるのです。
被害にあったり、悪意を向けられるだけでも、パニックになります。どうしていいか分からなくもなるでしょう。誰にも相談できず、一人で全部抱え込んで、解決の糸口も見出せないかもしれません。
誰であっても、自分が当事者になれば、その悲劇に「目がくらむ」のです。パニックになるのです。正常な判断などできません。

しかしこんな時こそ勝負の時です。
「ゆっくり濡れる」 覚悟があれば、第三者的に冷静に自分の置かれた環境を分析できるでしょう。誰か他人の話であれば、冷静に客観的にアドバイスが可能なはずです。

「親に相談したの?」
「先生には言ったの?」
などなど、色々な考えと、行動の指針が出てくるでしょう。

つらい時には、そのつらさに「すくまされたり」「目をくらまされたり」するものです。
そんな時こそ、「雨にあったら、ゆっくり濡れてこい」 という心の余裕を。
そうすれば暗礁に乗り上げたり、転覆したりしないで済むはずです。

肩の力を抜いて、深呼吸しましょう。そして現代ではあらゆる通信手段もあるではありませんか。いじめの相談窓口にSOSをスマホで打電する事も可能なのです。一人だけで天候の急変に対応せずとも、誰かが確実に救援に来ます。

問題は、一人で抱え込まないことです。そのためにも、大事なのが冷静な心と、余裕のある判断です。

「雨にあったら、ゆっくり濡れてこい」

天候の急変には、何よりも心の余裕が肝心です。

担当 こしがやじろう


【写真】 江田島の旧海軍兵学校の校舎 (現在は海上自衛隊幹部候補生学校)。
   構内の教育参考館では旧海軍関係の資料など約1,000点を展示。




 

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[ 2017/08/14 17:07 ] メッセージ | TB(0) | コメント(0)

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