【写真】 公開授業中に黒板に貼ったポスター
愛知県人権啓発ポスター(平成25年度)
個別課題ポスター(インターネットと人権) ◆◇ ネットいじめ解決法③ (学校編)
「道徳心を育てる教育プログラムの授業」 ◇◆【授業の目的とは、そして精神的支柱の確立を】
前回は、ネットいじめなどのSNSによる問題を防ぐための 「SNS活用教育」 が必要であること、そして、そのためには 「道徳」、「心の教育」 が必須であると述べました。
その授業の核には、教員同士のピア・サポート体制 (仲間の支援)、コンセンサスづくりが重要であるとも述べました。
具体的な授業の要点としては、
① スマホを置いて静かな時間を持てるような自制心を育て、良書に親しむこと
② 相手に伝わらない自己中心的な話し方から、相手の立場に立った思いやりのある話し方へ変化を促していくこと
③ 道徳心を高める意義ある授業を、エビデンスのある(効果が実証された)効果的な手法で行って成果を出すこと
この3点に集約され、加えて、先生方の話し合いの結果、どの教師にもできる授業、「自分で考えて判断できる子」 を育てるという視点も加味されることとなりました。
①の「自制心を育て、良書に親しむこと」 については、「日本と世界の偉人伝」 を中心とした 「朝読書」 をすることとなりました。
「中学生で偉人伝とは?」 という意見もありましたが、ただ読むだけではなく、人としてのアイデンティティの確立や社会貢献マインドの育成のため、どうして尊敬されるのかを考えさせることや、最近では津田梅子など女性が主人公の偉人伝も増えてきていますし、吉田松蔭、リンカーンなどが後世に残した影響を考えさせることになりました。
国語、数学、理科、社会、美術・・・それぞれの科目の先生方から、時代背景や考えるヒントが出されました。
②の 「相手の立場に立った思いやりのある話し方へ変化を促していくこと」 については、その基盤づくりとして、週一回、クラスの中で、「友だちの良いところさがし」 (構成的グループエンカウンター) を行うことになりました。
これは、心を開く人間関係づくり、自己肯定感を育てることに役立てます。毎回、相手を決めて、カードにその子の良いところを書いて相手に渡す、渡す相手の組み合わせを変えていくことで、常に他の人の長所を見ていくことの習慣化がなされ、人間関係調和をはかっていきます。
以上に基づいて公開授業が企画されました。
今回は、③の 「エビデンスのある(効果が実証された)効果的な『手法』」 を用いて、②の 「相手に伝わらない自己中心的な話し方から、相手の立場に立った思いやりのある話し方へ変化を促していくこと」 を中心にすえました。
私は、その 「手法」 の一つとして、道徳の柱にゴールデン・ルール (人のいやがることをしない) をかかげて、アサーション (自分と相手を大切にする表現技法) を含む、ソーシャル・スキルズ・トレーニング授業 (3回シリーズ) をご提案しました。
リハーサルには充分に時間をかけました。なんと校長先生が率先してロールプレイのモデル役を引き受けるなど大活躍し、教員同士の士気が一気にあがりました。
授業の要点を紹介します。
・心と言葉のルール (善悪の基準 )について学ぶ。
・ゴールデン・ルールを学ぶ。
ゴールデン・ルールとは 「自分がされていやなことは決して人にしない。自分がされてうれしいことを積極的に人にしていきましょう。」 ということです。
・基本ソーシャル・スキルズ・トレーニング
公開授業は新担任が中心となり、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの2人がサポートする形で行われました。
授業では、「基本ソーシャル・スキルズ・トレーニング」 として、ロールプレイ (注) を行いました。学校生活の中での一場面を切り取って、題材としました。
最初に大人がモデルを示すロールプレイを行い、次に、生徒が2人グループで前に出てきて、やってみます。
監督者 (先生) は、子ども達に加害者側、被害者側の役割を交代してもらい、どんな気持ちだったか、聞いてみます。
次に行うグループが観察者となり、先のグループの実践に対して、良かった点をほめ、「こうすれば更に良くなると思う」 と、ひとこと助言を行っていきます。今度は、観察者だったグループが実践します。
ですから、後のグループは学習し、どんどん良くなっていきます。
第1回目は、「勇気を出して断る」 「心から謝る」 スキルを身につける。 です。
場面設定は大事です。
子どもやインターネット関連の大きな人権啓発ポスターを黒板に貼って、意識が高まるように工夫してみました。
【写真】 公開授業中に黒板に貼ったポスター
愛知県人権啓発ポスター(平成25年度)
個別課題ポスター(子どもの人権) 【感情は行動にともなう】
思春期の子どもたちは、繊細です。
しかし、大人が正しいモデルを示し、勇気という翼をつけてあげることで、思いのほか飛翔していくことができます。
「自分の言葉で思いを伝えること」
「自分も相手も大切にしながら、正しいと思うことは静かに話してみよう」
と行動をうながしていきました。
出版されている様々なソーシャルスキル教育の書籍を読むだけでは、その真髄はなかなか伝わってきません。
アイコンタクトや、手振り身振り、実際やってみせることが大切ですし、実際に授業をするからこそわかることも多いのです。
【子どもたちの人間関係修正のきっかけになる】
公開授業では、様々なドラマが繰り広げられました。
第1回目の授業で、のびた君やしずかちゃんのいるクラスでは、のびた君が、正しいことを大きな声で言えるようになりました。
一方、私達は、優等生しずかちゃんの更生を心から願っていました。
彼女の心の歪みの原因がかつての人間関係の葛藤にあることがわかりましたので、「子どもたちにはダイヤモンドの心がある」と信じて、あるチャレンジをすることにしました。
かつて小学校時代にしずかちゃんの親友であり、今は不仲の女子を、「心から謝る」のロールプレイの相手方として選んだのです。
もし失敗しても、今より悪くなることはなく、成功したら大きな前進が期待できるからです。教員同士もリハーサルを通じて熟練度を増していましたので、冷静にチャレンジができました。
授業という舞台の上で、最後に登場した、しずかちゃんは形だけではなく、心から「ごめんなさい」と反省の言葉を口に出しました。
その姿をクラスのみんなが見ましたし、しずかちゃんのお母さんも見ることができました。前日まで欠席予定だったちびまる子ちゃんも、教室の角で静かに見ていました。
この授業をきっかけに、しずかちゃんは変わりました。過去のこだわりや心の中の葛藤を捨てることができたようです。他人に寛容な落ち着いた本来の自分を取り戻していきました。
クラスの他の生徒も、相手の成功を祝福できる子たちへと変化していきました。
その後、少し時間はかかりましたが、ちびまる子ちゃんも教室に入って授業を受けられるようになったのです。もちろん養護教諭とスクールカウンセラーの暖かい支えがあってこそでした。新担任と学年主任も家庭訪問を続け、保護者を支援していました。
また、「良いところさがし」授業の影響もあり、クラスの仲間には、まる子ちゃんを静かに見守る体制もできてきていました。
【すべては子どもたちの明るい未来のために】
このようにクラスが落ち着き、学年が安定し、学校全体が信頼と安心の場として回復していくと、翌年の学校全体の成績もあがりました。
PTA保護者からのクレームも無くなり、うれしいことに地域からも行事の後援等の協力体制が広がっていきました。
ネットいじめは、それ以降、全くなくなりましたが、私達は、不断の努力を続けていく決意で実践を重ねています。
授業に創意工夫がなされて、研究を重ねていることは言うまでもありません。
どんな便利なツールも人間が行うものです。
心を正しくコントロールできる人づくりのため、教育者として、私たち自身も真理や道徳を永遠に学び研鑽を続けていく覚悟です。
村崎 京子(仮名)
元教員、精神保健福祉士、社会福祉士、教育委員会スクールソーシャルワーカー
(注)ロールプレイ (role-playing 役割を演じる)
設定された人物になったつもりで発言したり意見を述べたりする学習方法。
疑似体験を通して研修を行う方法。

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