◆◇ 勤務校での 「いじめ」 問題 ◇◆ 今から25年以上前のことです。
私は、当時高校で2年生の担任をしていました。その高校は、喫煙、バイク乗車などの問題行動が多発し、勉強がやや苦手な生徒が少なくなく、私は大なり小なりストレスを感じながらも勤務していました。当時は良きにつけ悪しきにつけ元気のある生徒が多かったと感じます。
今回は、その時期に、教師のあり方を考えさせられた事件について述べてみたいと思います。
具体的な内容は申し上げられませんが、自分のクラスのA君が公共の場で大変迷惑をかけ、危険な行為をしました。
私は朝からA君の事情聴取をしました。しかし、なかなか事実を認めません。A君は潜在的に能力のある生徒なのですが、その分良くない方向にも力を発揮するタイプでした。教員の前では見せない姿が、陰に隠されているように思えました。
私はA君の問題行動の内容を把握していましたので、正直に言うように促しました。危険かつ多くの人に迷惑をかけた行為を認め、反省するようにと説きました。しかし、ふてくされた態度が続き、次第に反抗的になってきました。
私は、「許せない」、「見逃せない」という思いがこみ上げ、「お前はいつまでもそんな人間でいいのか!」と、大声で怒鳴りながら、立ち上がりざまにテーブルを両手で思い切り叩きました。「向かってくるなら来い」という思いでいました。
ところがA君は突然、涙を流し初めました。そして、「自分だってこのままでいいとは思っていないよ」とつぶやきました。
私はホッとしました。A君の本当の姿に接することができたように思えました。それからは、素直にありのままを話してくれました。
その後、校長から懲戒指導がA君に申し渡されました。
家庭訪問にいくと、素直な態度で課題をしっかりとこなしていました。御両親は学校の指導に御理解をいただき大変ありがたく思えましたし、「こんなご両親の元で、どうして・・・」と思いました。
それから数日後、学校は保護者面談の期間に入りました。
私のクラスのB君は少しひ弱な感じのする、おとなしく優しい感じの男子生徒です。思いを内に込めてしまうタイプなので、日頃から少し気にしていた子です。お母さんが面談にいらっしゃいました。
私は冒頭、「B君の様子で気になることはありますか」と問いかけました。
するとお母さんは、「少し前、貯金が減っていることに気づきました。何かを買っている様子はないのですが」とおっしゃいました。
これはただ事ではない、喝アゲ(恐喝)か「カンパ」だなと思いました。
翌日、B君を放課後に呼びました。「誰が相手でも絶対に仕返しなんてさせない」ことを訴え、ありのままの事実を話すように促しました。
B君を苦しめていたのはA君でした。聞けば、お金を持ってくるように強要されること数回、さらに、体育の授業の後の教員の目の無いところで暴力を振るわれることも何回かあったことが分かりました。
改めて貯金通帳を確認させ、金額と時期を把握しました。B君はさぞつらかったことだろうと思いました。
私は、A君とB君とも2年になってから担任した生徒です。ところが、二人は1年生でも同じクラスでした。B君のお母さんによれば、2年生のクラス発表があった日は、元気がなかったとのことでした。
生徒に充分に目が行き届いていなかったことを反省しました。
また、B君を救わなければと思うと同時に、憑き物が落ちたようなA君の謹慎中の態度から、担任としては複雑な思いでした。でも、事の重大さから、「A君の行為をそのままにしてはいけない」と考えざるを得ません。学年主任や教頭に、A君に「進路変更(自主的な退学)を勧める」方針を提示せざるを得ませんでした。
B君から聴取した事実を持って、学年主任と共に謹慎中のA君の家庭訪問に行きました。A君に時系列を追って事実確認すると、反省した様子で事実を認めました。驚いたことは、「B君以外にはお金を脅し取ったことはないのか」と尋ねると別の数件の事実を述べました。
御両親は、息子があまりにもひどい行為をしていたことを知り、ショックを受けていらっしゃるようでした。自主的な退学に関しては御理解いただけました。
A君には、「B君に逆恨みをしないように。もし何かすれば、警察の問題になる」との注意も与えました。現状でも十分警察沙汰レベルの事件でしたが、B君の御両親は警察までは考えていらっしゃいませんでした。
B君から巻き上げたお金と、B君以外で被害に遭った生徒に対しては、A君の保護者の方からその金額を返していただけました。
しばらくして、A君のお父さんから転学先が見つかったと、御連絡が入りました。今の住まいから遠くになる学校ですが、同じ高校2年生に転学できるので安心しました。
後日、A君が私物を引き取りに、学校に挨拶に来てくれました。別れ際、互いに笑顔で、「がんばれよ」、「ありがとうございました」で握手して別れました。B君も安心するだろうし、A君の行先も決まりよかったと思いました。
その直後のこと、三階の渡り廊下を歩いていると、私の横を後ろから一本の傘が飛んできました。思わず振り返っても、誰の姿も見えませんでした。きっと、「あいつがAを辞めさせた」との逆恨みした、A君の子分、取り巻きの仕わざでしょう。
数カ月後、A君からハガキが届きました。スキーをしているA君の写真とコメントでした。なんでもスキー部に入り大会に出て入賞したとのことでした。元々、力のある活発な生徒でしたが、元気に活躍しているようでうれしく思いました。
この事件を通して、最初のA君の懲戒指導はA君に立ち直りのチャンスを与えることになったと思いますし、B君にとっては、困ったことを自分だけで抱え込まないことの大事さを学ぶ機会となったと感じています。
また、私自身の「いじめ」解決体験は、「生徒や親御さんの心に寄り添う」という態度を学ぶという、教員としての貴重な体験であったと思います。
清川 洋

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