いじめについて、考えたい。なぜ起きるのか。どんな場合に、特に深刻になるのか。それを知り、克服の手がかりを得たいと思うからだ。朝日新聞社はアスパラクラブの会員を対象に3種類のアンケートを実施し、計約1万3000人から回答を得た。回答してくれた人の体験や研究者の指摘、各地の取り組みなどをもとに、いじめの構造と対策をみていきたい。まずはいじめの「理由」から。
「あいつ、変」
「近くに来るとくさい」
陰で言いふらし、仲間と盛り上がった。本人が声をかけてきても無視した。
東京都内の大学1年生の男性(19)は高校時代、同級生をいじめたと明かす。
近寄っていったのは自分からだ。2年に進級したあと、いつも一人でいたその同級生が気になった。声をかけると、自分のあとをついて回るようになった。
同級生は、急にジャンプするなど、ちょっと変わったところがあった。一緒に弁当を食べていると、周囲に「無理しなくてもいいんだぞ」と冷やかされた。その子と体育の授業でペアを組んだ他の同級生から「交代してくれ。お前らで組めばいい」と言われた。
一緒にいると、自分も孤立していくように思えた。悪口を言い始めたのはそれからだ。やがて同級生は自分から離れ、また一人で過ごすようになった。
「当時はいじめだとは思っていなかった」と男性はいう。今は後悔し、いじめた理由をこう考えている。
友だちがあまりできず、いじめられた経験もあった。友だちが欲しくて声をかけたのに、クラスの中で2人とも異質な存在として排除されるのでは、と不安やいらだちが募った。「それを彼のせいにして攻撃し、自分の方が『上』だと示してストレスを解消していたのかも知れない」
2人には別の個性があると周囲に認めさせることができれば、友だちとしてつきあえただろう、と思う。
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いじめた相手は、仲の良かった幼なじみだ。
京都府内の高校1年の女子(15)は、中学に入学した時、幼なじみに誘われ、一緒に運動部に入った。
運動が苦手で、部員数人から「へたくそ」と悪口を言われ、嫌なあだ名をつけられた。同じように苦手だった幼なじみと、「相手にしないで、がんばろうね」と励まし合った。
2年になり、幼なじみは部活を休みがちに。「自分から誘っておいて」とイライラした。中心になって、「うざい」「どんくさい」と言い、無視した。一緒にいじめた4人の中には、自分をいじめていた子もいるが、一緒に悪口をいうと仲良くなれた気がした。
今は、いじめた理由をこう思う。「いじめられてむしゃくしゃし、私より運動が下手な子にぶつけ、自分より『下』がいると思いたかったのかも知れない」
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10代・20代向けのアンケートでは、「中心になっていじめたことがある」と答えた人の8割がいじめられた経験も持っていた。「中心」以外の人に比べ、いじめられたという割合がずっと高い。「中心」には、家族による虐待などの被害経験を書き、そのストレスをいじめではき出したと振り返る人もいた。
北九州市立大の楠凡之(くすのきひろゆき)教授(臨床教育学)は、いじめが起きる理由は加害者の「傷つき」だと指摘する。「傷つきを理解、共感されない時、他者を攻撃してしまう。相手の弱さや不完全さを攻撃し、自分の弱さを否認しようとする」。虐待や夫婦間の暴力などで深く傷つき、学校でしつこくいじめる例も多いという。
いじめのない社会の実現をめざすNPO法人ジェントルハートプロジェクトの武田さち子理事は「いじめは、いじめる側の問題だ。いじめられる側にも原因があるという思い込みは根強いが、それならその子がいなくなれば、いじめは終わるはず。でも、実際には別の子をいじめる」と話す。
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福岡県飯塚市の古賀洵作さん(当時16)は、98年12月、同級生から現金を要求され、直後に自殺した。母の和子さん(57)は、いじめは人権侵害であり、ひきょうな行為だと訴えるとともに、いじめる子のつらさに向き合うことが大切だと唱えている。
「9年間、いじめの現場をみて分かったのは、いじめる子もいじめられた経験があるということ。学校でのいじめは対象がクルクル変わり、多くの子が最終的にいじめる側に回る。でも、自分の意思通りに生きようとする子は、いじめる側に回らない」
この9年は、「いじめられる子は弱い子」という誤解を払拭(ふっしょく)する戦いだったという。
■いじめへのかかわり方と、いじめられた経験の有無はどう関係?
●中心になっていじめた人
いじめられたことがある 80.7%
いじめられたことはない 19.3
●いじめに加わった人
いじめられたことがある 64.5
いじめられたことはない 35.5
●面白がった・見て見ぬふりをした人
いじめられたことがある 48.2
いじめられたことはない 51.8
●止めようとした人
いじめられたことがある 52.3
いじめられたことはない 47.7
(アスパラクラブ会員アンケートから)
<アンケートの方法> 朝日新聞の無料会員サービス「アスパラクラブ」のホームページで、6月13日から18日まで実施。10代・20代対象のアンケートには2601件、親対象には8885件、教師・元教師対象には1630件の回答を得た。回答者の一部に、直接取材した。
朝日新聞 2007年08月28日
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