月曜日の朝。教室で「おはよう」と声をかけると、小学校の時からの友人は、困ったような顔つきでささやいた。
「私に話しかけない方がいいよ。やられるよ」
振り返ると、いつもは友人と一緒にいる女子数人がすごい顔でにらんでいた。
理由は、友人にもわからない。朝、登校するとだれも話してくれず、「とにかくうざい」「死ね」「目障り」という声が、後ろから聞こえてきたのだという。
次の休み時間、そのグループの子から「あの子としゃべらないで。むかつくから」と言われた。友人に話しかけることはできなかった。心の中で「ごめんね」と繰り返した。
次の月曜日。同じグループの別の子が、一人ポツンと座っていた。「今度はあの子か」。友人も、いじめる側に加わっていた。
愛知県の女子大生(20)の、中学2年のころの体験だ。「いじめの最中も、クラスの雰囲気は普通。見て見ぬふりだった」と振り返る。「やめよう」と声を上げるのは難しかった。
「だって、自分がターゲットになるから」
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大阪樟蔭女子大学長の森田洋司教授(教育社会学)は、いじめをとめようとする仲裁者が少なく、見て見ぬふりをする傍観者が多いと、「歯止めが利かなくなり、いじめがエスカレートする」と指摘する。
だが、10代・20代のアスパラクラブ会員を対象にしたアンケートでいじめに関する経験を聞いたところ、「とめようとした」と答えた人は13%で、「面白がったり、見て見ぬふりをしたりした」人(34%)の4割にも満たない。
「面白がったり、見て見ぬふりをしたりした」人にその時の気持ちを聞くと(複数回答)、「かわいそうで嫌な気分がした」(47%)が最も多く、「次は自分がいじめられるかも知れないと不安だった」(31%)が続いた。「いじめの中心になったことはないが、加わったことがある」という人が理由に挙げるのは、「自分がいじめられたり、仲間外れにされたりするから」(29%)が最多だった。
傍観した経験を持つ東京都の男子大学生(19)は、「注意するのは、正義感に加え、権力がないとできない。今の時代、ジャイアンのような強い正義の味方はいない」と話す。子どもの集団に、自分がいじめられる恐れがなく、集団をまとめることができるリーダーがいないという指摘だ。
森田教授は、子どもたちがいじめの歯止めになれない状況を、集団が「自己制御機能」を失った状態だと評し、「いじめ問題の対応は、基本的には子どもたち自身による自律的な歯止めの形成に指導の重点がおかれなければならない」と強調する。
その例として、生徒会が自らいじめ撲滅などに取り組み、悩みを意見箱やメールで受け付けるといった活動をしている大阪府高槻市立第七中学校を挙げる。
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子どもが歯止めになり、いじめがとまった。そんな事例も、もちろんある。
大阪府の女子大生(24)は中学時代、深刻ないじめを体験した。
「あんたなんか死ねばいい」。そう言われ、3階のトイレの窓から突き落とされかけた。上半身は外に出てしまい、コンクリートで舗装された自転車置き場が目に映った。両手が窓枠に引っかかって助かったが、精神的に追いつめられ、家で手首を切ろうとした。
母親が訴えても、学校は当初、いじめを認めなかった。だが、ほかのクラスの生徒の親も「うちの子もみた」と働きかけ、教師が休み時間に教室を見回るなど動き出した。先輩や男子も、教室から閉め出されているとカギを開けてくれたり、「昼ご飯はうちのクラスで食べな」と声をかけてくれたりした。
進学校だったせいか、猛勉強して成績を上げると、自分へのいじめはやんだ。いじめの中心にいた子の取り巻きから「仲間に入らない?」と声をかけられた。
次のターゲットは別の女の子。その子がいじめられないよう、ずっと一緒にいた。教師に頼んで生徒に背中を向ける時間を減らしてもらい、弁当は消しゴムのかすを入れられないよう持ち歩いた。「私にしたのと同じことをしていたので対処しやすかった」。いつのまにか、いじめは消えた。
その子の味方をできたのは、自分がいじめられた時にいろんな人がかばってくれたのを考えると、恥ずかしいことはできないと思ったこと。自分へのいじめが終わり、「浮いていてもいじめられない」存在になっていたこと。通っていた私立中学のほかに小学校や近所の友人が大勢いたこと。そんな理由だったと思う。 asahi.com
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