「いじめから子供を守ろう!シンポジウムin広島」報告
秋分の日の9月23日(火)、秋晴れの空の下、いじめから子供を守ろう!シンポジウムin広島が開催されました。
テーマは「いじめは必ず克服できる」。
地元広島をはじめ近県各地から約400名の参加者がありました。教育関係者・PTA関係者等を迎え、熱気あふれるシンポジウムとなりました。
【内容詳細】
◆活動の紹介DVD上映
◆開会宣言
◆来賓挨拶
第一部
◆「現代のいじめの実情について」
いじめから子供を守ろう!ネットワーク代表 矢内筆勝
昔と全く違ういじめの様相を見て、会を立ち上げた。いじめに関する啓蒙活動・電話相談を含む救済活動・教育改革への提案を主に行っている。子供たちに、善悪の価値判断を教えることで、いじめは必ず軽減できる。
現代のいじめは、きわめて悪質で、残酷で、巧妙に行われている。その多くは犯罪行為である。大人は、して良いこと・悪いことの明確なルールに守られた生活をしているのに、子供たちは学校に一歩足を踏み入れると、無法地帯で生活をしている。もしこのまま日本の教育を改革せずにおけば、日本の未来はきわめて危うい。
理想の教育はどうあるべきか、どうすべきかを考え、今こそ行動しなければならない。
吉田松陰に「草莽崛起(そうもうくっき)」という言葉がある。立場は違えど、心あるひとりひとりが立ち上がり、未来に向けて行動していかねばならない。
◆基調講演「学校に正義を取り戻そう! -わが子をいじめから守るために-
日本教育再生機構理事長・高崎経済大学教授 八木秀次氏
八木先生は、ご自身のお子様がいじめにあい、夫婦お二人で学校に乗り込んだエピソードを紹介され、いじめをなくすために必要な教育改革について語られました。
《必要なのは、教育の正常化である》
◎法律が当たり前のように守られる学校にする
広島では、過去、国旗・国歌問題を背景に校長が自殺する事件が起きた。国旗・国家を入学式・卒業式に掲揚しないのは法律違反であるのに、それが守られていなかった。あまりのありさまに、文部省(当時)の是正指導を受けた経緯がある。さきの教育基本法改正時に、教育は「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべき」と書き加えられたが、これは、当然のことをわざわざ入れなければならないほど、法律を守らない人が多かったことを物語っている。
◎道徳教育の重視
教室の中に、道徳を確立する。
○ゆとり教育の撤廃
ゆとり教育を取り入れた寺脇研氏が広島県教育長時代には、広島県の学力の低さはひどかった。ゆとり教育は、「日本の子供は勉強しすぎでストレスを抱え、引きこもり・暴力行為などの問題を起こしている」という立場に立ち、子供のストレスを除去しようとする考え方である。しかし現状では、日本の子供たちは世界のレベルから見ても勉強量が少ない。「小人閑居して不全をなす」という言葉があるが、学力と人格には、大きな相関関係がある。決められた時間をきちんと座って先生の話を聞くことは、学力の向上だけでなく人格を磨くことにもつながる。子供の人格を低下させているゆとり教育は撤廃すべき。
○子供の権利に関する考え方
昨今、子供の権利・人権がやたらと語られるようになり、全国各地で「子どもの権利条約」が作られるようになった。そのさきがけとなった川崎市の「子どもの権利条約」を読むと、子供に「ありのままの自分でいる権利」を保障する、とある。しかし、子供に「ありのまま」でいられては、困る。子供には、向上していってもらわねばならない。この条例の背景にある「子供の自己決定権」の出典となるのはJ.S.ミルの『自由論』である。そこには、自由社会では他人に迷惑をかけなければ何をしても良いのだということが書かれている。これを根拠にした条例であるが、実はミルは、その次の段落に「言うまでもないことだが、これは子供には当てはまらない」と書いている。この部分をわが国では完全に無視して、子供にも自己決定権があると理論構成している。子供の権利・人権をやたらと前に出すと、子供の人格が鍛えられない。
昨年行われた読売新聞の全国世論調査によると、「道徳教育の強化を検討」している政府の方針に賛成する人は、92%と高かった。道徳教育の現状を見ると、善悪の判断を教える教育になっていない。善悪の判断を教師がきちんと教える形にすべきだ。
広島経済同友会によると、中小企業の経営者が困っている実態がある。新入社員が全く使い物にならない。学力も低く、電話対応もままならないという。日本は、一部の「レベルの高い人」がリードしてきた国ではない。一般庶民のレベルを全体的に高くして、国を引っ張ってきたが、現在では、この庶民のレベルが低くなってきている。庶民のレベルを上げなくていいというのが、国の政策になってしまっていることが間違い。子供を鍛えて、キラリと光る存在にしなくてはならない。鍛えられない子供こそ、不幸だ。
《いじめをなくすためには》
○ 地域や親が、学校を完全に支え、学校の風通しをよくする。
尾道市の土堂小学校は、オープンで、地域のお年寄りや親が常に校内にいる状態となっている。また、荒れた高校に大人が入り、先生をトップに生徒と一緒にトイレ掃除を続けて学校を建て直した例もある。
○ 全体の環境を変えることによって、いじめはなくなる。
○ ゼロトレランス
規則を細かく決め、違反者には厳密に罰則を与える方法で、アメリカで教育荒廃が起こった頃、生徒指導上最も効果のあった方策。
わが子を、犯罪の被害者にも加害者にもさせてはならない。
◆「人間にとっての教育の大切さ」
皇擧館中学・高等学校校長 大島謙氏
大島先生は、ご自身が校長を務める皇擧館の歴史から語られ、教育の大切さ・日本人の持つ情緒性の大切さを語られました。
日本人が失いかけているもの、日本人が失ってしまったかもしれないものについて語りたい。
「平等」と「公平」の違い。戦後、特に学校教育の場で結果平等ばかりを追い求めてきた。同じスタートラインに立てること、これは「平等」。そして、努力するものとしないものとで結果が変わること、これは「公平」である。福沢諭吉の『学問のすすめ』にも、孔子の『論語』にも、教育の大切さが語られている。「今のままでいいんだよ」という教育は、こどもを差別し、大人の義務を放棄していることになる。
江戸時代末期の寺子屋の数を見ても、明治維新後すぐに敷かれた学制の充実ぶりを見ても、当時の識字率を見ても、わが国は世界で最も教育熱心な国であった。それを打ち砕いたのは、GHQ。二度と日本人を立ち上がらせないために、教育をダメにしてしまおうと考えた。そして、日本人が先人から受け継いできた知恵・情緒性などをなくさせたのが、戦後の公教育である。
公教育の現状は、甘やかし(まやかし)の教育である。ゆとり教育、偏向教育、ジェンダーフリーの立場に立った性教育など、教育とモラルを崩せば、日本はダメになってゆく。
第二部
◆朗読劇 地元広島の中学生
第二部のはじめに、地元広島のかわいらしい中学生5人による朗読劇「KYだから」が演じられました。この朗読劇は、いじめを許さない教師の会・北海道の千葉先生が書かれたもので、短いながらとても感動的な作品でした。
「いじめのある学校、いじめのない学校、どちらの学校に通いたいですか。みんなでいじめをやめたら、私たちの学校はいじめのない学校になるのです。みなさんはどうしますか?」
◆「いじめの構造」
教育評論家 森口朗氏
このいじめから子供を守ろう!ネットワークのシンポジウムで何度か講演されたことのある森口先生は、楽しい話術で聴衆をリラックスさせながら、いじめ解決のための具体策を講じられました。
基本的な考え方は、八木・大島両氏と同じであるが、別の視点から論じたい。
いじめは、確かに人権侵害をしているが、実は学校の中で起こる問題は、人権について考えて対処しても解決できない。人権とは、国家と闘うために出てきた大きな概念である。被害者の人権 対 加害者の人権という無限と無限の課題がぶつかり合うと、問題が解きにくくなる。人権という無限課題を使わずにいじめを解決する具体的方策を考えるべきである。具体的な内容は、後のパネルトークに譲るが、「いじめ防止条例」の制定もそのひとつである。
◆パネルトーク「いじめは必ず克服できる」
コーディネーター 田中順子氏(法政大学講師)
パネリスト
八木 秀次氏(日本教育再生機構理事長・高崎経済大学教授)
大島 謙氏(皇擧館中学・高等学校校長)
森口 朗氏(教育評論家)
矢内 筆勝(いじめから子供を守ろう!ネットワーク代表)
井澤 一明(いじめから子供を守ろう!ネットワーク事務長)
急用のため、大島先生は途中退席されましたが、井澤事務長も入ってくださり、熱気あふれるパネルトークとなりました。
◇ 問題解決学習で、一部の児童だけが問題の解き方を考え、その他の児童は授業中にほったらかしにされている現状を参観授業で目にした。学校が、学力面だけでも機能していない実態について。
八木 この問題の根っこには、文科省の「子ども中心主義」の発想がある。先生を「教育者」とせず、「学習の支援者」とする発想が、文科省の中にある。子供の性善説に立ちすぎの考え方で、うまくいくはずがない。
◇ 基礎があっての才能の開花と考えるが、教育の現状は、日本の未来を失わせるのでは。
大島 教育の手法や技法の問題ではない。来賓挨拶で県議会議員の石橋氏がおっしゃった
道徳教育・宗教教育、そして情操教育が子供を自立させていく。どうか、宗教教育を恐れないでいただきたい。道徳教育・教養教育は、宗教教育に行き着くもの。情操教育が確立すれば、子供は自立する。「さあ、やろう」と声をかけるだけでできる子供に育っていく。我慢する力も教えられず、自立できない子供が世に出ても、巣から落ちて禽獣に食べられるだけだ。虫の音を聞いて音楽性を感じる日本人は多いが、ヨーロッパ人では少ない。直球勝負で男らしさ・女らしさ・日本人らしさを持たせ、日本人としての誇りを持たせたい。そうすれば、自分に自信が持て、いじめは解決できるようになる。
◇ いじめ相談の実態について
井澤 一昨日も、中学生と話をした。学校でいじめにあい、解決したにもかかわらず、週に2~3回のメールがその子から来る。いじめを受けた後、子供はとても傷ついている。人間としての誇り・自尊心がずたずたになっている。いじめられた子に対して、いじめた子からきちんと謝ってもらうことが、最も解決に近い道。相手の子にちゃんと謝るように指導して欲しいと、親から学校に話すこと。子供のけんかに親が出て行っていい。
矢内 不登校生徒は、中学生で13万人、高校生で15万人という大変な数字がある。文科省は、複合的な理由だというが、相談を受ける中で、いじめが原因の不登校が5~6割あるという感触を持った。学校サイドでは、解決能力が極めて低く、これが引きこもりやニートへとつながる。
学校で子供を相手に講演する機会を何度か得たが、子供たちは、どの子もすばらしい、いい子ばかり。「いじめはいけない」という言葉を、子供たちは求めている。いいことを教えてもらって実行するとほめてもらえるので、「いいことを知りたい」と思っている。子供たちに正しいことを教えるのは、大人の責任だ。
◇ いじめ解決の具体策を。
森口 誰にでも、できることがある。いじめが発生し、腹が据わらない大人が集まって話し合いをしているとき、交通整理するという大切な役。誰でもオピニオンリーダーになれる。重要なことは、①被害者の保護 ②加害者の処罰 ③加害者のケア ④両方の問題。 この順番を間違えないこと。①を考えているときに、加害者のことを話し始める者が出てきたら、「今はまずこの問題から」と止める。②を考えているときに、加害者のケアを気にして場が混乱するとき、「まず処罰を」と止める。①②を話すときに③を持ち出してくる者が多いが、「大人が出て解決する」という気持ちを見せることが大切。また、話し合いのときに、必ず子供の人権を持ち出す者がいる。「人権の問題ではあるが、まず具体的に考えましょう」と言うこと。
八木 先生の姿勢ひとつにかかっている。同じ子供を扱っていても、先生によって反応が変わってくる。教えない・指導しないという教育理論を持った先生は、強制しない・叱らない・大声を出さない。教室がいじめの温床にもなる。密室期間が長いので、「学校の常識は世間の非常識」と言われる状態になっている。学校をオープンにして、風通しをよくすることが大切。今、教師になる学生が大学で学んでいるのは、70年代にアメリカではやった理論ばかりで、すでにアメリカでは捨てられたもの。常識を教えるのは、我々世間であり、親である。
◇ 学校の現状を知ったからには、行動をおこしたい。市民として何を改善すればよいか。
森口 学校に厳しい話ばかりが続いているが、立派な先生は確かにいる。しかし、学校の中で孤立している。負けずに闘う人を支援することが大切と考える。外部の人間ができることとして、「教師がいじめを見過ごすことを許さない」などの条文を持ったいじめ防止条例の制定を提案したい。
◇ いじめられていることを親には言えずにいる子供が多い。親として、どんな観点で対応すればよいか。
井澤 いじめられている子供は、言えなくて辛い思いをしている。我慢をしている。親に言えるには、親、特に母親とのコミュニケーションが大切。このネットワークの活動を通して、「いじめを許さない教師の会」ができた。会の先生が、5月の家庭訪問のとき、母親らから涙で迎えられたという。4月から毎日、「いじめは許さない」といい続けたことが、母親の心に通じた。「よくなって欲しい。だから叱る」という姿勢で臨んで欲しい。御用PTAの罪もあげたい。PTAに「いじめ防止担当」を作ってもよいのではないか。
矢内 今、先生たちは武器を奪われた状態で闘っている。体罰を禁止され、厳しい指導ができなくなっている。子供を守るために学校もがんばらなければいけないが、「もっと毅然とした指導をしてください」と、親が声を上げるべき。
八木 学校の先生と緊張関係を持ちつつ「支える」ことも大事。武器を奪われた先生からさらに武器を奪うかもしれないのが、「子どもの権利」だ。これを盾にされると、いじめが発生しても打つ手がなくなる。
森口 高い理想を持ちながら、目の前のことを具体的に解決していく、という思いが大切。
井澤 今年でも300件の相談があった。解決の重要ポイントは、お父さん・お母さんが「俺がおまえを守る」という決意。これが強いと解決する。弱いと、子供の信用を失ってしまう。
矢内 広島は、日本の誇る教育県だった。教育県広島から全国に広がった志・気概が日本という国を支えてきた。寺脇研氏のゆとり教育で、それがずたずたにされてしまった。寺脇氏は、広島での実績をもとに文部省でゆとり教育を全国に拡げた。ゆとり教育が拡がった頃から、いじめが悪質・巧妙化してきた。今、広島から理想の教育を作っていっていただきたい。教育県広島の復活を望む。
◇ 本気は、人の心を打ちます。
動き出してくださる人をお待ちしています。
◆ 閉会挨拶
いじめから子供を守ろう!ネットワーク広島代表 山本浩徳
広島の本来あるべき姿を取り戻していきたい。「やるべきことをしなかった」「できることをしなかった」「傍観者でいた」と後悔したくない。現状を知ったならば、立ち上がらなければならない。教育の問題は、日本の未来の問題、世界の未来の問題である。

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Respect is the key to good relationships
Love is action
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