教員免許更新制の存続を
教育評論家・石井昌浩 氏 
教員免許更新制、全国学力テストの見直しなど、新政権の教育政策転換が明らかになりつつある。30年間続いた「ゆとり教育」から「学力向上路線」へ転換したばかりの学校現場には新政権に寄せる期待と懸念が交錯している。
去る8月下旬、ある私立大学で教員免許更新講習の講師をした時のことを報告したい。10年、20年、30年のキャリアを持つ現職教員を対象とする講習だけに入念な準備を重ねて当日に臨んだ。私が担当したのは道徳教育だった。その県は大半の教員が日教組に所属しているためもあって、道徳教育について不信感を抱く人が多いと聞いていたので、心なしか緊張していた。しかし、1日6時間の大変ハードな日程にもかかわらず、先生方の受講態度は真剣そのものだった。質問も数多く出され、戦後の学校教育の中で事実上タブーとされ触れられることのなかった、道徳教育の近代史の秘められた真相について受講者間の共通理解が深められたと思う。
講習が済んでから提出された感想文には「今まで知らなかった事実の多さに驚いた」「道徳教育について自分が消極的だった理由が分かった。これからは新たな構えで子供たちと向き合いたい」など、先生方が自信と誇りを持って教壇に立つ意欲が湧いたという趣旨のものが多かった。
正直なところ私は、直前まで免許更新講習は「屋上屋を架(か)すもの」にならないかと危惧(きぐ)していたが、実際に担当してみて認識を改めた。今までの市町村や都道府県の現職研修とは内容面でレベルの違う、刺激に満ちた講習が実施できたと自負している。教師の指導力を向上させるためには、多面的な研鑽(けんさん)を積むことの重要性を改めて認識させられた経験だった。
児童・生徒の学びを保障するためには何よりまず、教師自らが学び切磋琢磨(せっさたくま)することが欠かせない。2年前の自民党の教員免許法改正案の講習時間は30時間なのに、民主党提出の「学校教育力の向上3法案」では100時間の講習の義務付けを規定していた事実からも、教師のライフステージに応じた研鑽の重要性は明らかである。始まったばかりの免許更新制は廃止することなく、改善を重ねた上で存続させるべきである。
次に新政権は、全国学力調査について、現行の全員参加方式をやめ抽出調査に切り替える意向と報道されている。
日教組等は、学力に関する実態を把握するのには、現行の教育課程実施状況調査の改善・充実で十分としている。しかし、この調査は、主に学習指導要領の定着状況の把握を目的とする抽出調査であって代替できる内容ではない。
全国学力調査は、全国的な教育水準を確保すると同時に、各学校において、教師、児童・生徒が取り組むべき個別の改善課題を明らかにすることを本来の目的としている。現に、学力調査の結果をもとに、授業改善の具体的な実践を開始している学校は多い。来年は、3年前に小学6年生だった生徒が、中学3年生となり調査に参加することになる。3年間の学習の成果を検証するための願ってもない機会なのだ。全員参加方式の継続を強く希望したい。
【2009年10月19日 産経新聞】
【写真】石井昌浩氏(元国立市教育長)

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>「今まで知らなかった事実の多さに驚いた」
>「道徳教育について自分が消極的だった理由が分かった。これからは新たな構えで子供たちと向き合いたい」
>日教組等は、学力に関する実態を把握するのには、現行の教育課程実施状況調査の改善・充実で十分としている。
結局、そこには 子ども不在の大人の論理が まかり通っているのかな、と思いました。
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