埼玉県教育局、独自の道徳資料集を作成 

今こそ道徳、
埼玉県教育局が 独自資料集


100217 読売新聞 埼玉県教育局が、県内の公立校に通う小中高生向けに、「道徳」教育用の資料集を独自に製作した。
 暴力行為やいじめなどの問題が深刻化する中、命の大切さや他人の痛み、帰属感といった問題を学ぶきっかけになればと企画された。道徳は正式教科としての位置づけがなく、同局によると、高校まで一貫した教材を独自製作するのは、全国的にも異例という。さいたま市の小中学生を除き、4月に配布される。

 資料集は、小学校の低・中・高学年、中学、高校の計5種類(いずれもA4判)で計約65万8800冊。昨年5月に発足した作成委員会が準備を進めてきた。
 発達段階などに応じて内容は異なるが、いずれも「規律ある態度」「埼玉県の偉人」「伝統・郷土の話題」「命の尊重」をテーマにした物語やコラムなど、県内の教員らが書いたり選んだりした20~38教材が盛り込まれている。
 140年前から続くという川越市の菓子屋横丁の飴(あめ)屋(小学校中学年用)、東京五輪の聖火台を製作した川口市の鋳物師・鈴木文吾氏(高学年用)ら埼玉ゆかりの人物のエピソードや、携帯電話のメールや自己紹介サイトの「プロフ」で悪口を書かれた生徒の作文(高校生用)を採用。進路を親に反対される場面を想定し、自分の気持ちをどう伝えるかを考えるコラムなども掲載されている。

 現在の学習指導要領は、小中学校の道徳の授業について年間35時間行うと定めているものの、正式な教科とは位置づけられていない。特に高校は何の規定もないが、県教育局は昨年3月、県内の公立高校に対し「年5回以上、道徳の授業を行う」との推進方針を通知。今回の資料集などを通じて高校でも道徳教育を行い、規範意識や命の大切さなどを学んでもらう考えだ。
 同局生徒指導課の担当者は「資料集は教員らの手作り。学校でぜひ活用してほしいし、家庭に持ち帰り、親子でも読んでみてほしい」と話している。

 同局によると、県内の公立小中高校に通う児童生徒の暴力行為は、2008年度に2559件発生し過去最高。インターネット上の掲示板に特定の人の悪口を書き込むなどの「ネットいじめ」も認知されただけで131件あった。自殺未遂を起こし、自己中心的で公共マナーが守れない生徒たちも散見されるなど、学校現場が抱える課題は多い。

◇小学校中学年用より 「一輪の花」
 少年栄一の近所に、重い病気に苦しむ一人暮らしのりんという娘がいる。感染するとのうわさがあっても、栄一の母えいは娘を案じ、野菜をおすそ分けしたりしている。娘は喜ぶが、栄一は嫌がって近づけない。
 <むすめがいつものお礼にと、ぼたもちを作り持ってきました。(中略)母は、おいしそうにぼたもちをほおばったのです。(中略)むすめが帰るとすぐに、「お母さんが病気になったらどうするんですか」と、母を心配しました。しかし、「あら、そんなことありませんよ。お医者様は『うつりません』とおっしゃったわよ。それに、私が食べることによって、あの子はどんなによろこぶでしょう」と、ニコニコしながら話しました>

 母親は共同風呂にも娘を連れていった。居合わせた人々はそそくさと立ち去るが、母親は気にも留めず、娘の背中を流した。娘はその後、他界した。
 <栄一は、むすめのはかに一輪の花をたむける母のすがたをそっと見つめていました。栄一は、九十一歳でこの世をさるまで、世の中のこまっている人のためにはたらき続けました。それは、やさしい母えいのすがたが栄一の心の中に生き続けたからです>
 1840年、血洗島村(現在の深谷市)に生まれた渋沢栄一のエピソードだ。

【2010年2月18日 読売新聞】
【写真】埼玉県教育局が小中高生向けに作成した道徳資料集。表紙写真やイラスト、物語などは教員らが手がけた 

 

  

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