教育ルネサンス いじめ対策
(1)「いい雰囲気作り」へ努力 
穏やかな表情の遺影の横に、スナップ写真が何枚も飾られている。「学校は何もしてくれていなかったのか」。自宅の居間で、両親は悔しさに満ちた心中を静かに語った。
いじめられていた友人を救えなかったことを悔やむ内容の遺書を残し、
6月7日、川崎市立中学3年の男子生徒(当時14歳)が自宅で自殺した。加害者として4人が名指しされていた。
生徒の母親(44)は、友人がいじめにあっていると生徒から聞き、4月の家庭訪問で学級担任に伝えていた。友人をかばった生徒自身もいじめられていたらしいと両親が聞いたのは、自殺の後だった。
「これ以上被害者を出してはいけない。真実を明らかにして、いじめをなくして」と生徒の父親(45)は訴える。
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いじめにかかわる悲劇が続く。
今年3月、鹿児島県で男子中学生が自殺、いじめとの関連が疑われている。
6月には岐阜県で、女子中学生が服を脱がされ、携帯電話で動画撮影されるという悪質ないじめが発覚した。
全国の学校での
いじめ認知件数(文部科学省調べ)は、2008年度で8万4648件と、
2年連続で減少してはいる。だが
一方で、いじめの潜在化を心配する声も根強い。
国立教育政策研究所は6月、07年から3年間実施したいじめ追跡調査で、
小学4年~中学3年でいじめと無関係でいられる児童生徒はわずか1割という結果を発表した。どの学校、学級でも、どの子も、被害者にも加害者にもなりうるという衝撃の結論だ。
同研究所生徒指導研究センター・総括研究官の滝充さん(56)は「いじめにピークはない。いつでも起きると考え、学校全体でいい雰囲気作りを続けるしかない」と話す。
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川崎市は04年以降、いじめの社会問題化を背景に、いじめ対応マニュアルを全市立学校教員に配布。いじめ防止などのため、ゲームや共同作業で人間関係を学ぶプログラムを導入し、自殺した生徒の学校も昨年度から行っていた。
事件後、校長は「校内にいじめはあった」と認めたが、自殺との関係については、本紙の取材に「調査中」としている。事実関係の把握と原因究明は、学校や保護者代表、有識者らで構成する調査委員会にゆだねられている。
何があったのか。担任や学校は対応していたのか。だとすれば何が問題だったのか。
誰の身にもおこりうるいじめ。各地の取り組みを探った。(京極理恵)
【2010年7月16日 読売新聞】
(2)親の「知る権利」確立訴え 「学校や教育委員会が持つ子どもの情報を、親の私たちが知ることはできないのか」
2月15日、東京都清瀬市で同市立中学2年女子生徒(当時14歳)が自殺した。それから5か月後、自宅で取材に応じた父親(53)は、納得いかない表情で話した。これまでに教委が公開した情報では、自殺直前の学校での状況がほとんどわからないというのだ。
自殺の10日後、いじめをうかがわせる手書きのメモが自室で見つかり、学校は生徒らの聞き取り調査を実施。市教委は記者会見で結果の概要を発表し、「生徒に関する悪口やうわさは一部であったが、学校に生徒は訴えていなかった」と説明した。
両親は3月下旬、
「学校側が選んでまとめた内容だけでは事実はわからない」として、学校が自殺の数日前に実施した学校生活に関するアンケートなどについて文書開示を市に請求。
生徒自身が書いた文書は開示されたが、
ほかの生徒の手書き文書は非開示だった。
両親は開示結果に不満を抱き、2、3月に開かれた職員会議の議事録やメモなどの公開を引き続き請求中だ。
市教委は「プライバシーにかかわる問題であり、教育的配慮が必要」と説明する。
父親は「匿名でいい。いつどこで何があったのか。子どもの心境を知る生の判断材料が欲しいだけ」と語る。
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「裁判なんか起こしたくなかったけれど、肝心の情報を出さない学校の姿勢が決断させた」と話すのは、いじめのない社会を目指して設立されたNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)理事の小森美登里さん(53)だ。
1998年、娘の香澄さん(当時15歳)(神奈川県立高校1年)を自殺で失った小森さんは、2001年、香澄さんへの精神的いじめがあったとして、県と元生徒らに慰謝料を求めて提訴した。
事実を知りたいと、周囲の生徒が書いた作文の内容公開などを学校側に求めたが十分なものが得られず、
裁判なら隠された情報が引き出せるかもしれないと考えた。
07年に和解で決着し、
県はずっと非公開だった生徒らの作文を部分開示した。
同NPOは今、
「学校にかかわる事件・事故について、親の『知る権利』の確立を」と国会議員らに訴えている。
小森さんは、「真実を隠せば、周囲の子どもたちの心にも傷が生まれ、再発防止を妨げる。我が子に何があったか、親が知ることができる仕組みづくりが必要です」と話している。(京極理恵)
◇
◆メモ 文部科学省の調べによると、2008年度に自殺した国公私立小・中・高校の児童生徒は136人。うち、いじめの状況に置かれていたとされるのが3人。同省は1999~2005年度のいじめ自殺を当初ゼロと発表していたが、いじめ問題深刻化を受けて再調査した結果、計2件に訂正した経緯がある。
【2010年7月17日 読売新聞】

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